sandasatoyamacamのブログ

関西学院大学 総合政策 佐山浩ゼミ(研究室)

進級論文「日本とマレーシアにおける環境意識・環境配慮行動に関する研究」

こんにちは!佐山ゼミ三回生の本田香織です。今回は、進級論文の内容について報告したいと思います。

私の進級論文のテーマは、「日本とマレーシアにおける環境意識・環境配慮行動に関する研究」です。

 

〈研究動機〉

私は2017年の4月から8月までマレーシアの環境NGOが運営する自然公園でインターンをしていました。赤道付近に位置する常夏のマレーシアは、国土の大部分が熱帯雨林に覆われ、その中で育まれてきた多種多様の生態系が存在しています。たとえば世界で一番大きい花として有名なラフレシアが生息しているのもマレーシアです!しかし新興国マレーシアでは経済発展のための開発が進み、森林伐採や大気汚染など多くの環境問題が顕在化してきています。そこでマレーシア国民は、自国の自然について、また自国で起きている環境問題についてどう考えているのか、に関心を持ったことが今回このテーマを進級論文に選んだきっかけです。

 

〈研究目的〉

2017年に行われたCOP23では「パリ協定」に係る指針作りが進められたが、その一つの課題としてあがったものが、「先進国と途上国との差異」です。環境問題に対する責任に先進国と途上国の間に差異があるのは明らかであり、先進国による途上国の環境問題対策への協力は必要不可欠です。しかし国によって経済や政治状況や自然環境は大きく異なることから、先進国の方策を途上国に適用させることは難しいと考えられます。そこで各国の環境に対する姿勢を顧みた環境問題へのアプローチ法を提案するため、各国の人々の環境意識・環境配慮行動の差異とその影響要因を把握することにしました。

今回は途上国の中でも近年著しい発展を遂げる一方で、数多くの環境問題を抱えるマレーシアと先進国である日本の大学生を対象とし、環境意識と環境配慮行動について調査しました。本研究はその調査結果を基に、人々の環境意識、また環境配慮行動の差異とその影響要因を特定し、途上国の環境意識の向上と積極的な環境配慮行動を促すためにはどのようにアプローチすべきであるかを考察することです。

 

〈研究内容・結果〉

日本とマレーシアの学生における環境意識と環境配慮行動の差異とその影響要因を分析するため、今回は、日本においては関西学院大学神戸三田キャンバス総合政策学部の大学生に、マレーシアにおいては私のインターン先であったマレーシアの環境NGOであるMalaysian Nature Societyと州政府によって管理されているクアラセランゴール自然公園の来園者(学生のみ)を対象に、環境意識の有無や環境配慮行動の頻度、またそれを引き起こすと考えられる影響要因を問うアンケート調査を実施しました。

また今回は、

a)マレーシアの大学生よりも日本の大学生の方が環境意識は高いが、環境配慮行動は低い

b)自然の多い地域に住んでいるほど環境配慮行動を行う

c)環境教育を多く受けているほど環境配慮行動を行う

の3つを既存研究などを参考にアンケート調査の仮説として設定しました。

アンケート調査で得られたデータをもとに両者の比較分析を行った結果、マレーシアの大学生よりも日本の大学生の方が環境意識は高いが、環境配慮行動には消極的であることが判明しました。日本は環境問題に対する意識や技術は発展しており、大学生においても豊富な環境問題に対する知識を身に着けているものの、それが実際の行動には結びつかないことがわかりました。これは日本は環境の質が高いため、環境保全の重要性が感じられにくいこと、つまり「生活環境における自然の有無」が原因の一つであると予想されます。また環境配慮行動の項目別の結果を見ると、日本の学生は日常生活の中で行えるものの実施頻度は高いものの、環境保全運動といった能動性を求められる環境意識行動では実施頻度が大き下がることが判明したことから日本の学生は環境問題や環境保全に対して受動的であり、これに対しマレーシアの学生は能動的であることがわかりました。

また仮説B「自然の多い地域に住んでいるほど環境配慮行動を行う。」について有意差は認められず、仮説は間違っていたことがわかりました。しかし、完全に相互関係はないという結果ではなかったことから、日本は環境の質が高いため環境保全の重要性が感じられにくく、これに対し、現在経済発展のために過剰な開発を進めるマレーシアでは環境の現状が好ましくない状態に向かっているため、危機感を覚え環境改善に寄与する行動を取っているのではないか、という予測は間違いではないとも考えられる。

また仮説C「環境教育を多く受けているほど環境配慮行動を行う。」は正しいことが証明されました。これらのことから日本、マレーシアに共通して環境意識・環境配慮行動の形成に大きな影響を与える要因は「環境教育の有無」であり、環境問題に対する正しい知識を持ち、環境保全のために自分が何をすべきかを判断できるよう教育を行っていくことが、両国の環境問題解決のためのアプローチとして求められるということがわかりました。

 

今後の課題としては、分析の結果、影響力が大きいことが判明した「環境教育の有無」の面からアプローチし、マレーシアを中心とした新興国における環境意識と環境配慮行動を向上させる政策を研究していきたいと思います。また今回分析することができなかった、他に考えられる影響要因である社会観や政治観、節約志向、また自然環境主義や近代技術主義といった環境倫理をふまえた個人の価値観などを含めたアンケート調査を卒業論文で実施できればと思っています。

長くなりましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました!