sandasatoyamacamのブログ

関西学院大学 総合政策 佐山浩ゼミ(研究室)

戦い方は、ひとつじゃない。

お久しぶりです。佐山ゼミ三回生の永田良樹です。

今回は5月18日に兵庫県人と自然の博物館(通称ひとはく)にて行なった、第二回里山実習について寄稿させていただきます。

今回の実習では博物館におじゃまして、研究員の橋本佳延(よしのぶ)さんからお話を伺いました。プログラムとしては二部構成で、午前中は講義形式で里山とはなにか、里山の現状、今後の課題について具体的なデータを基にお話頂き、午後からは講義で取り上げられていた、実際に市と地域ボランティアの方々とが協力して保護活動を行っている「ブイブイの森」という場所に行き、測量体験などを行いました。今回はそのレポートならびに感じた事を書きたいと思います。

 

まずは講義についてです。講義では主に里山のことを教えていただいたのですが、皆さんは里山という言葉の意味をご存知でしょうか。言葉としては聞いたことがあれども意味はよくわからない方が多いのでは? 大辞林 第3版によれば、「【里山】集落の近くにあり、かつては薪炭用木材や山菜などを採取していた、人と関わりのふかい森林」とあります。その他いくつかの辞典やサイトを調べてはみましたが、明確な概念はなくきわめて曖昧なものらしく、ここでは橋本さんによる定義づけを採用し、住居の近くに存在し、定期的に維持管理しつつ人が上手に木々を使い続けている森としておきます。

その里山が、今かなり危機的状況にあることは想像に難くないでしょう。以前は薪や炭は燃料として、落ち葉は肥料として当たり前のように使われていた里山の木々ですが、戦後のエネルギー革新によってもはや不必要なものとなってしまい今は多くが放置されている現状があります。そこで里山を守らなければならない新たな動機づけに、里山にこれまで考えられてこなかった新たな3つの価値を見出したそうです。その三つとは、環境、防災、そして文化機能です。

環境を守るためとしての里山は、パリ協定において定められたのが記憶に新しい、温室効果ガスの削減目標の達成に役立つと考えられます。簡単に言えば光合成です。その他にも森は騒音を吸収したり水の浄化機能があり、環境のために里山を守るというのは合理的であるといえます。防災のためとしては、森が土砂崩れを防ぐという役割があげられます。最後に文化機能としての里山を守るというものがあり、私たちの年代も含めて近年の子供たちには森と親しむ(例えばキノコ狩り、虫取りなど)という機会が本当に減っていて、その文化を守る必要があるのではないかということです。さらに森林浴やパワースポットとしてのあらたな森の文化的価値も生まれてきており、守られるに足るものになってきているといえます。

ただ実際に守る人たちは誰なのかと問えばやはりボランティアの方々がメーンになり、その多くが定年退職後の高齢者の方々です。さらに人口減少の問題からボランティアの人自体も減ってきており、やはり若者のボランティアへの参画が必要不可欠になってきています。それをどうにか増やそうと研究員の方々は日々活動されており、ひとはくではその一環として子供たちへの山での授業や体験活動が盛んにおこなわれています。個人的に少し調べてみたところ、子供の五官を通じた森での体験の有無は最終学歴に相関関係があるという研究結果があるそうで、里山体験が親たちの中でブームになる日も近いのかもしれません。

 

 

続いて午後からは実際に山に入り、実際に里山とはどういうものなのかを肌で知るとともに、研究員の方々の仕事体験をさせていただきました。

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研究員の方々は10×10mの範囲を指定してその中の木々の樹高、周囲、被度(その範囲においてどの程度葉っぱが占めているか)などを測量し、地形や土壌、方位など多岐にわたるものを事細かに毎木調査票(写真下)に記載し、他との比較などに利用するそうです。

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毎木調査を実際に行っているところです

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橋本さんの話の中で特に印象に残ったのがオオバコという草の話です。森では木々が私たちの想像を超えた生存競争が広がっていて、葉の側面に鋸歯(きょし)と呼ばれるギザギザを作ることによって他の草に寄りかかりながら成長したり、種に羽のようなものを生やして少しでも遠くに飛ぼうとしたりと様々な工夫をしながらサバイバルを生き抜いていくそうです。その中でオオバコは他の草木がすぐ負けてしまうような動物に踏まれやすいところにあえて生えて、光を独り占めにするという方法をとったそうです。オオバコは踏まれることが好きなのかと橋本さんに聞けば全くそうではないそう。でも彼らは体を強くすることによってとにかく踏まれることに耐えに耐え、生きている。私はここに就職活動でもがく大学生を見ました。なにも自分が苦手なところだけで戦う必要はなく、得意なことを自分に合った場所で発揮できればいいのではないでしょうか。人に耐えがたいことでも自分には耐えられる、それもストロングポイントの一つに違いないのです。

ブログ用

踏まれてもなお青々とした葉を広げ続けているオオバコ

今回の実習では里山の基礎知識、現状課題を知れただけでなく、自然に学生にとってとても重要なことを教えてもらったような気がします。次の実習では何が学べるのか、今からもうすでに楽しみです!というところで今回のブログの締めとさせていただきます。長文読んでいただきありがとうございました。

p.s. 日常生活に疲れたあなた、就活がうまくいかず病んでしまいそうなあなた、ぜひ一度里山に足を運んでみましょう! 自然に癒されることでなにか新たな気づきが得られるかも!